
ドローンを飛行させる上で、国土交通省が飛行マニュアルを発行しているのはご存じでしょうか。
ドローンを飛行させる人はこのマニュアルを熟読した方がよいと思います。趣味の範囲で少し飛ばすだけだから関係ないと思っていたら、違法な飛行で罰則となる可能性もありますので、是非理解を深めていきましょう。
※この記事は私が知りえた情報を私なりに解釈した内容が含まれており、内容を保証するものではありませんのでご留意ください。
この記事の目次
遵守しなければならない事項
無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項
(1)第三者に対する危害を防止するため、第三者の上空で無人航空機を飛行させない。 |
人にケガを負わせたい人なんていないと思いますが、自分の身を守る意味でも他人の上空で飛行はさせないようにしましょう。ポイントは「第三者」という表現です。家族や友達、撮影を許可してくれた人は「第三者」には含まれません。
(2)飛行前に、気象、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認する。また、他の無人航空機の飛行予定の情報(飛行日時、飛行経路、飛行高度)を飛行情報共有システム(https://www.fiss.mlit.go.jp/)で確認するとともに、当該システムに飛行予定の情報を入力する。ただし、飛行情報共有システムが停電等で利用できない場合は、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課に無人航空機の飛行予定の情報を報告するとともに、自らの飛行予定の情報が当該システムに表示されないことを鑑み、特段の注意をもって飛行経路周辺における他の無人航空機及び航空機の有無等を確認し、安全確保に努める。 |
(3)5m/s以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止する。 |
風速5mというのは実際によくある事です。まずは、所有している機体がどれくらい耐風能力があるのかを調べてみましょう。GPS付の機体であれば5m程度であればそこそこ安定しますが、GPSが切れたりしたら機体は簡単に流されてしまいます。そういうリスクも考えて飛行させましょう。
ただし5mというのは業務上で使用するには制限が厳しく感じますので、必要に応じて安全策を講じてマニュアルを改変しましょう。
(4)多数の者が集合する場所の上空を飛行することが判明した場合には即時に飛行を中止する。 |
ここでいう「多数の者が集合する場所」というのは、イベントなどの催しものではなく、自然発生的に人が集まった状態を指していると考えます。当然ですが墜落時にリスクが高いので、それを発見したら速やかに飛行を中止しましょう。
(5)アルコール又は薬物の影響により、無人航空機を正常に飛行させることができないおそれがある間は、飛行させない。 |
アルコールは当然ですね。車の免許と同じように考えるのがよいかと思います。薬物とは一般の薬も該当すると思われます。体調がよくない場合は飛行させない事ですね。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
「アルコール」とは、アルコール飲料やアルコールを含む食べ物を指します。また、「薬物」とは、麻薬や覚醒剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれます。アルコールによる身体への影響は、個人の体質やその日の体調により異なるため、体内に保有するアルコールが微量であっても無人航空機の正常な飛行に影響を与えるおそれがあるため、体内に保有するアルコール濃度の程度にかかわらず体内にアルコールを保有する状態では無人航空機の飛行を行わないでください。
つまり常時監視できない状態で飛行させる場合は申請が必要という事がわかると思います。
(6)飛行の危険を生じるおそれがある区域の上空での飛行は行わない。 |
(7)飛行前に、航行中の航空機を確認した場合には、飛行させない。 |
飛行前に空の状況を確認しなさいという事ですね。飛ばすための準備や機体の確認などをしていると忘れがちになりますので、これも頭に入れておくべき内容ですね。私は経験がありませんが、自分が飛行させる場所に他のドローンを発見した場合は、衝突や事故を防ぐ意味で調整する必要があります。特に高高度を飛行させる場合や、山頂から水平に谷方向へ移動させると150m以上の飛行となってしまうケースがあります。表示される高度は飛行させた場所からの高度ですので、谷方向へ移動しマイナス分は加算されていませんので注意が必要です。
(8)飛行前に、飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を飛行させる者と調整を行う。 |
(9)飛行中に、航行中の航空機を確認した場合には、着陸させるなど接近又は衝突を回避させる。 |
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
次に掲げる方法で飛行させてください。
(1)無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の航空機を確認し、衝突のおそれがあると認められる場合は、当該無人航空機を地上に降下させることその他適当な方法を講じてください。
(10)飛行中に、飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、当該無人航空機との間に安全な間隔を確保して飛行させる。その他衝突のおそれがあると認められる場合は、着陸させるなど接近又は衝突を回避させ、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を飛行させる者と調整を行う。 |
(11)不必要な低空飛行、高調音を発する飛行、急降下など、他人に迷惑を及ぼすような飛行を行わない。 |
これは、「飛行空域を問わず順守する必要があるルール」の1つです。許可や申請などこれはなく、いかなる場合も守らなければならない項目になります。
(12)物件のつり下げ又は曳航は行わない。 |
曳航(えいこう)とは、荷物などを引っ張って航行する事です。
(13)十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない。 |
(14)無人航空機の飛行の安全を確保するため、製造事業者が定める取扱説明書に従い、定期的に機体の点検・整備を行うとともに、点検・整備記録を作成する。 |
(15)無人航空機を飛行させる際は、次に掲げる飛行に関する事項を記録する。 ・飛行年月日 ・無人航空機を飛行させる者の氏名 ・無人航空機の名称 ・飛行の概要(飛行目的及び内容) ・離陸場所及び離陸時刻 ・着陸場所及び着陸時刻 ・飛行時間 ・無人航空機の飛行の安全に影響のあった事項(ヒヤリ・ハット等) |
ドローンを飛行させた場合や点検時は、記録をつける必要があります。紙でも電子でもいいので記録をつけるクセをつけましょう。
(16)無人航空機の飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案が発生した場合には、次に掲げる事項を速やかに、許可等を行った国土交通省航空局安全部無人航空機安全課、地方航空局保安部運航課又は空港事務所まで報告する。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24 時間運用されている飛行空域を管轄する空港事務所に電話で連絡を行う。 ・無人航空機の飛行に係る許可等の年月日及び番号 ・無人航空機を飛行させた者の氏名 ・事故等の発生した日時及び場所 ・無人航空機の名称 ・無人航空機の事故等の概要 ・その他参考となる事項 |
イレギュラーな事態が発生したら報告義務があります。ここには電話番号などは載っていないため、あらかじめ調べておくことをお勧めします。
事態が発生したら焦ってしまうのは目に見えていますので、必ず把握しておくようにしましょう。
また、国へ報告する前に警察・消防・救急や第三者への連絡が第一になります。
(17)飛行の際には、無人航空機を飛行させる者は許可書又は承認書の原本又は写しを携行する。 |
無許可でドローンを飛行させるのは言語道断ですが、必ずしも許可書や承認書など書面がないケースもあります。電話やメールなどで許可をもらった場合は、誰に・いつ許可をもらったのかを記録するようにしましょう。
安全を確保するために必要な体制
無人航空機を飛行させる際の基本的な体制
場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。 ・風速5m/s以上の状態では飛行させない。 ・雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない。 ・十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない。 ・飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。 ・補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。 ・補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。 ・ヘリコプターなどの離発着が行われ、航行中の航空機に衝突する可能性があるような場所では飛行させない。 ・第三者の往来が多い場所や学校、病院等の不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。 ・高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。 ・高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設付近では飛行させない。 ・飛行場所付近の人又は物件への影響をあらかじめ現地で確認・評価し、補助員の増員等を行う。 ・人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所及び周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する。 ・飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には速やかに飛行を中止する。 ・人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。 ・人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。 ・夜間の目視外飛行は行わない。 |
補助者という人物がここで出てきました。飛行させるには補助者が必要と書いてあります。また、「人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所」と書いてある通り、かなり条件が厳しい事がわかります。また、後半3点については、飛行ができない条件となっていますので注意が必要です。
- 人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。
- 人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。
- 夜間の目視外飛行は行わない。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
「人」とは無人航空機を飛行させる者の関係者(例えば、イベントのエキストラ、競技大会の大会関係者等、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者を指します。また、「物件」とは飛行させる者又は飛行させる者の関係者(例えば、委託元等、法令で定める距離(30m)内に無人航空機が飛行することを了承している者)が管理する物件以外の物件を指します。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
次に掲げるものが「物件」に該当します。
a)中に人が存在することが想定される機器
b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物等
具体的な「物件」の例は以下のとおりです。
車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等
工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等※なお、以下の物件は、保護すべき物件には該当しません。
a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道
の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
b)自然物(樹木、雑草 等) 等
人又は家屋の密集している地域の上空における飛行又は地上又は水上の人又は物件との間に30mの距離を保てない飛行を行う際の体制
・飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させる。装備できない場合は、第三者が飛行経路下に入らないように監視及び注意喚起をする補助者を必ず配置し、万が一第三者が飛行経路下に接近又は進入した場合は操縦者に適切に助言を行い、飛行を中止する等適切な安全措置をとる。 ・無人航空機の飛行について、補助者が周囲に周知を行う。 |
人口密集地ではプロペラガードを装着するように記載がされています。自作機など装着できない場合は必ず補助者を配置する事が明記されています。「必ず」という言葉はここでしか出てきませんので、注意して下さい。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
人又は建物、車両などの物件との間に距離(30m)を保って飛行させること
つまり30m確保できない状態で飛行させる場合は申請が必要という事がわかると思います。
催し場所の上空における飛行を行う際の体制
催し場所上空の申請は、場所を特定しない方法では申請ができませんので、都度申請となりますのでご注意下さい。
・飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させる。 ・地表等から150m未満で飛行させる。 ・飛行速度と風速の和が7m/s以上の状態では飛行させない。 ・無人航空機の飛行について、補助者が周囲に周知を行う。 ・催しの主催者等とあらかじめ調整を行い、以下に示す立入禁止区画を設定し、第三者が当該区画に立ち入らないよう措置する。なお、予め調整した催しの主催者等からの条件についても申請書(様式1)その他参考となる事項に、調整結果として記載する。
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場所を特定しない申請では、風速5m/sという数字が出てきましたが、催し物上空では風速+飛行速度の和が7m/sに制限されています。風速だけ意識してればよいわけではない所に注意しましょう。
また、立入禁止区画を設ける必要があり、催し物を行っている会場でこれほどの区画を準備するには相当大変かと思います。私は頼まれても催し物上空は飛行させたくはありません。。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
祭礼、縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させないこと○該当する例:
法律に明示されている祭礼、縁日、展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート、町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為) 等
○該当しない例:
自然発生的なもの(例えば、信号待ちや混雑により生じる人混み 等)
(※)人数について、特定の時間、特定の場所に数十人が集合している場合は、「多数の者の集合する」に該当する可能性があります。
つまり催しもの上空で飛行させる場合は申請が必要という事がわかると思います。
夜間飛行を行う際の体制
・夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する。 ・飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施する。 ・操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限る。 ・補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。 ・夜間の離発着場所において車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な照明を確保する。 |
まず夜間についてですが、その場所の日出から日没時刻になります。いくら周囲が明るくても、その時間になったら「夜間」になりますので注意しましょう。また、夜間は目視外飛行をする事ができません。必ず目視をする必要があります。モニターで映像を見ながら撮影したい場合などは、補助者に映像を見てもらうなどして対応しましょう。また、夜間など暗い状況ですとビジョンポジショニングシステムが反応しなかったりする可能性もあり、より高度な操縦テクニックが要求されます。真夜中に撮る事はほとんどないと思いますが、夜景や日出直前、日没直後など撮影するケースがあると思いますので、より注意して飛行させましょう。
なお、夜間飛行については「夜間飛行の訓練を修了した者に限る」とされているため、もし自分が夜間に飛行させたい場合は、夜間飛行コースのあるドローンスクールへ入るしかないと思います。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
日中に飛行させること
つまり日中以外で飛行させる場合は申請が必要という事がわかると思います。
目視外飛行を行う際の体制
・飛行の前には、飛行ルート下に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等を有する補助者のもと、目視外飛行を実施する ・操縦者は、目視外飛行の訓練を修了した者に限る。 ・補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。 |
目視外については、ドローンの機体を見ないで操作をする事です。一般的には建物の周りを撮影したい場合は、ドローンが建物の影となるときにモニターを見ながら操作をする事になります。このような場合も目視外ですが、ドローンは真正面にあって見える状況にあっても、カメラのアングルや設定を変更するなどドローンから目を離す行為自体が目視外にあたりますので、注意しましょう。
ほとんどの場合、カメラアングルをチェックしながら飛行させると思いますので、個人的にはこの目視外というのは必須だと考えます。こちらもドローンスクールで目視外コースのあるスクールで修了すれば大丈夫です。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
・目視範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
・「目視により常時監視」とは、飛行させる者が自分の目で見ることを指し、双眼鏡による監視や補助者による監視は含みません。なお、眼鏡やコンタクトによるものは「目視」に含まれますが、これらを常用されている方は、無人航空機を飛行させる際も必要に応じて使用してください。
つまり常時監視できない状態で飛行させる場合は申請が必要という事がわかると思います。
危険物の輸送を行う際又は物件投下を行う際の体制
・補助者を適切に配置し飛行させる。 ・危険物の輸送の場合、危険物の取扱いは、関連法令等に基づき安全に行う。 ・物件投下の場合、操縦者は、物件投下の訓練を修了した者に限る。 |
危険物といって思い浮かぶのは「農薬」でしょうか。物件投下は「散布」等にあたります。農薬散布をドローンで行いたい場合は、上記内容を順守して飛行させる必要があります。こちらも訓練修了した者のみに限られています。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
・爆発物など危険物を輸送しないこと
・無人航空機から物を投下しないこと
つまり危険物輸送で飛行、物を投下させる場合は申請が必要という事がわかると思います。
しかし、設置する行為は投下にはあたりません。
無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&Aより
無人航空機を使って設置する(置く)場合は、物件投下には該当しません。
非常時の連絡体制
あらかじめ、飛行の場所を管轄する警察署、消防署等の連絡先を調べ、2-8(16)に掲げる事態が発生した際には、必要に応じて直ちに警察署、消防署、その他必要な機関等へ連絡するとともに、別表のとおり許可等を行った国土交通省航空局安全部無人航空機安全課、地方航空局保安部運航課又は空港事務所まで報告する。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24 時間運用されている空港事務所に電話で連絡を行う。 |
現場を経験した事がある方なら馴染みがあると思いますが、工事の時と同じように緊急連絡体制をちゃんととっておく必要があります。事故が起きてしまうと、かなり焦ります。その時に調べるのでは相当自分自身にストレスとなると思いますし、迅速な対応ができなくなってしまいます。
あらかじめ、万一の事を想定して調べておきましょう。